導入事例CASE01:
WEB受注と一般受注の組み合わせで大幅に業務を効率化

導入企業の概要とシステムの関係

導入企業(以下「A社」)はプライム市場に上場する化学メーカーである。事業の中に圧力容器で販売するガスがある。今回事例紹介するシステムは、このガス販売(繰り返し販売)をWEB上から行うためのものである。取引形態はB2Bで、納入先は取引先の店舗(数千店舗)となっている。

システム構築の目的

取引先からの注文はFAX・電話・メールで受信。この注文を元に、発送倉庫と出荷日を決定。3PL(Third(3rd)Party Logistics:物流会社)に連絡し、取引先に決定内容を報告。3PLの納入情報で売上計上していた。出荷前であれば、取引先からの変更を受付。この流れを手作業で行っていたが、限界(関係者との作業調整)が見えてきた。

システム化のポイント

WEB受注に変更、FAX・電話・メールによる受注や変更連絡は残る
システムの起点はWEB画面からの発注と考えたが、FAX・電話・メールでの発注、変更連絡は残ると予想された。つまりWEB画面だけでなく、一般の受注画面(以下「一般受注画面」)も必要となる。
発注者はWEB受注以外の登録データもWEB上で閲覧可能に
取引先(店舗)からすると、受注ではWEB画面とその他の方法での追加、訂正データはWEB上で一緒に表示される必要があった。
WEB受注と一般受注は同じマスタを利用
上記の要求を満たすためには、WEB受注と一般受注画面は同じマスタを利用する必要があった(得意先、店舗、品目など)。
変更情報・緊急納品は3PLにも連絡
店舗需要の急激な変化のため各店舗からの緊急配送要請がある。これを速やかに物流業者と情報共有する必要があった。WEB受注画面は、一般消費者の商品購入画面とは異る。例えば「配送は予定配送表から選択」「発注者により商品選択に制限」「送料計算」など。B2Bの特殊性である。
取引開始(口座開設)もWEBで
新規契約はWEB申込方式に変えたい。申込みから審査、決定までの流れもシステム上ですべて統制したいと考えた(一部、電話連絡は残る)。

システム提案

前項内容から、以下の提案を行った。

マスタはWEB受注、一般受注ともに共通化する
WEB受注と一般受注で利用するマスタ類は同じものを利用する。
「オンネットEC」「オンネット販売」で構成
構築済みの「オンネットEC」「オンネット販売」をクラウド上にインストールし、変更箇所を確認しながら完成させる。特に、一般受注である「オンネット販売」は、開発済みの機能が蓄積されており、取引データの項目に抜けが無いよう確認し、実データでシミュレート、それを「オンネットEC」側に反映する手順とした。
クラウド上に構築
システムは「オンネットEC」「オンネット販売」ともに、マイクロソフト社クラウド(Azure)に展開する。ネットワークの安全利用と分散利用(どこからでも)、バックアップの確実化(仮想サーバ、DB)、段階的能力増強などの観点で選択した。
要件定義は画面を確認しながら段階的に
当社はメインフレーム時代からのシステム経験を大事に、システム構築を進めている。昨今の「試行錯誤型開発」「RPA」を若干、冷ややかに傍観している。
ただ、作成済み(ここが大事)の「オンネットEC」「オンネット販売」を眺めながら、変更、追加実装を繰り返し進める「アジャイル開発」「再利用開発」には、有効性があると考えている。

システム構成

販売管理フロー

システム化の効果

作業工数が大きく減った
稼働して5年以上(2023年2月現在)が経過しているが、極めて大きい工数削減を成しえた。
・電話・FAX連絡が劇的に減った。受注情報を発注者が登録してくれる点が大きい。発注者も過去発注から参照発注しているので、「かなり便利になった」と考えられる。
・3PLへの連絡がデータになり、配送作業の調整作業が大きく減少した。
・受注から出荷までの業務処理が自動化され、工数削減が出来た。
・取引希望をWEBから受ける様になった事で、受付・信用調査・承認までの流れが、システムにより固定化、可視化される様になった。
・災害、国家行事などによる、発注制限、納入遅延の連絡、画面制御が簡単に行え、連絡の確実化、作業工数削減が出来た。
・配送範囲拡大(システム開発当時の数倍)であるにもかかわらず人員増員が抑制的になっている。
次の課題を考えられるようになった
システム化とは「業務手順の固定化」による「自動化」と考えられる。本システム化により、大きな部分の自動化は推進された。
さらに「業務手順の固定化」対象を拡げる作業を日常的に行えている。具体的には、物流御者からの「納入情報の自動収集」「取引先システムとの連携」などである。この様に「業務改善を繰り返す取り組み」の日常化効果が大きい。